知識の無い者は知識が無いという事を認識できない

人々は,何かを為すためには正しい知識を得ていなくてはならない。しかし,人々の持つ知識には様々な程度の差があり,それによって物事を為す見込みにも差が現れてくる。銀行の監視システムに関して正しい知識があれば,白昼に銀行強盗を行っても逃げおおせることができるかもしれない。 Wheeler の場合は,その点が致命的であったために,少しの間も逃げることはできなかった。

Kruger らはここで,もうひとつの考察を提示する。人々はある物事に関して正しい知識を持たないとき,その無知を自覚することができないのではないだろうか? Wheeler の場合で言えば,彼はレモンジュースを顔に塗れば監視カメラから逃れることができるという誤った考えを持っていただけでなく,彼自身は物事を上手くやっているという確信を得ていた。銀行の監視システムに関して正しい知識を持つ人ならば,そこから完全に身を隠すことなどは不可能であることを理解し,確信を得るには至らないのではないだろうかと思われる。

無知は知よりも多くの確信を生み出す。種々の問題を科学によって解明することは決して出来ないと高らかに断言するのは,多くを知る者ではなく,知の少ない者の仕業である。 ― チャールズ・ダーウィン

言い得て妙で実に面白い。